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いじめについて
~マサシくんのこと~
小学校4年生のマサシくんが、おかあさんと相談室にやってきた。
早朝、電話が入り、急遽相談になった経緯もあり、きっと何かトラブルでもあったのだろうと推察して相談にのぞんだ。
おかあさんはマサシくんのランドセルを机の上に差出し、「これを見てください」とランドセルを指さした。
ランドセルには、「死」とカッターナイフのようなもので書かれていた。
「学校にはこのことを伝えていますか」とおかあさんに話すと、「はい。伝えました。ただ、学校は、『これはいじめではない。子どもたちのいたずらにすぎない。過度に気にする必要はない』『マサシくんもクラスメイトにたくさん迷惑をかけています。お互い様でしょう』としか返答してもらえず、私の気持ちも収まらないので、こうやって相談に来ました」とのことであった。
その日は、おかあさんの話を傾聴し、いくつか助言をしてお帰りいただいたが、事情が気になったので、おかあさんの承諾を得てこちらから学校に連絡をしてみた。
先生は、マサシくんがどれだけクラスメイトに迷惑をかけているか、母親が過保護すぎるといった主張を繰り返すばかりだった。その後、いじめはエスカレートし、マサシくんは不登校となった。そして、成人になった現在もひきこもり状態から完全には抜け出せずにいる。いまでも後悔している事例の一つである。
いじめの影響は予後にも
いじめは、マサシくんのように二次的な問題を発生させる重大な事態である。
いじめられっ子にも、いじめっ子にも、周囲の傍観者と呼ばれる子どもたちにさえ、ネガティブな影響を及ぼすものともいわれている。いじめの予後として「うつ」「不安障害」「自殺」のリスクが高まるといった調査結果もある。しかし、残念なことに、我が国では、いじめの予後に関する調査研究は皆無に等しい。いじめの長期的な予後について関心がないのだろうか。不登校になり、学校から遠ざかってしまったマサシくんは今もいじめの渦中にあるのに。
文

平 雅夫(タイラ マサオ)
専門分野:障がい児者の教育、障がい児者の心理、障がい児者の福祉














