- 教育
教えるをアップデートする ICT×生成AIの実践知|AIが学校に入る時代の教員の役割【体験授業】
授業レポート
小学6年生が、AIに作文の下書きをさせました。
あなたが担任、あるいは保護者だったら、どうしますか。
——この問いに、正解はまだありません。生成AIが学校に入ってくる今、教員はこうした判断を毎日のように迫られはじめています。
先日開催した星槎大学・大学院のオープンキャンパスでは、第2部の体験授業のラストで、この問題を正面から扱いました。テーマは「教えるをアップデートする ICT×生成AIの実践知」。担当したのは、小学校の教員・管理職として30数年を過ごし、現在は初等教育専攻で情報教育を担当する横山美明教授です。
本記事は、当日の授業の様子をお伝えする授業レポートです。この授業には、ひとつ大きな特徴がありました。Zoomのアンケート機能を使った、参加型の授業だということです。
記事のなかでも4つの問いをそのまま出題します。ぜひ、ご自身ならどれを選ぶか考えながら読み進めてください。そのあとに、当日の参加者がどう答えたかをお伝えします。
目次
監修
星槎大学 共生科学部 専任教授
横山 美明(ヨコヤマ ヨシアキ)
担当:初等教育専攻/小学校家庭科、情報教育
専門分野:情報教育、ICT活用、小学校家庭科
研究テーマ:GIGAスクール化における学校教育/管理職・担当者としてのGIGAスクールへの対応/ICT活用の日常化に向けた取組/小学校家庭科の授業づくり・授業改善
プロフィール・研究業績等
「これまでは小学校で教員・管理職として子どもと共に30数年を過ごし、視聴覚・情報教育と家庭科教育を中心に様々な実践研究に取り組んできました。今、教育現場でもGIGAスクール構想を受け、教育DXが急速に進んできています。誰もが学べる共生の視点での教育DXについて考えていきたいと思います」
※本記事は、2026年に開催した星槎大学・大学院オープンキャンパス 第2部の体験授業の内容をもとに再構成したものです。
1. この授業は「参加型」です
授業の冒頭、横山教授はこう切り出しました。
「聞いているだけではつまらないかなと思いますので、Webライブスクーリング、参加型で少しやっていきたいと思います。Zoomのアンケート機能を使っていきますので、皆さんもアンケートに対して積極的にお答えいただければと思います」
そして、参加者が答えやすいよう、こう付け加えます。
「なお、誰がどのアンケートにどんな風に答えたかは、一切私の方では分からないことになっていますので、そこは安心して、思っているところでご回答いただけるといいかなと思います」
「通信制のオンライン授業」と聞くと、動画を一方的に見るだけ——というイメージを持たれるかもしれません。実際には、こうして問いが投げられ、参加者が答え、その結果を見ながら全員で考えを深めていきます。
ここからの4つの問いは、当日そのまま出題されたものです。ぜひご自身の答えを決めてから、先へ読み進めてください。
2.【Q1】AIが学校に入ってくる。どう考えますか?
最初の問いは、率直な気持ちを問うものでした。
Q1. AIが学校に入ってくることについて、今どう考えますか?
A 積極的に使うべきだ
B 条件付きで使うべきだ
C まだ不安が大きい
D よく分からない
お決まりになったでしょうか。当日の結果は——
当日いちばん多かったのは「B 条件付きで使うべきだ」でした。
横山教授は、この結果にこう反応します。
「本当であれば、時間があると皆さんに『どんな条件が考えられますか』なんてことを聞きながら進めていかれるんですけど……」
「条件付き」と答えた人が最も多い。しかし、その「条件」の中身は人によって違う。——ここがまさに、これから教育現場が答えを出していかなければならない部分です。
この授業の残りは、その「条件」を具体的に考えていく時間になります。
3.【Q2】小6がAIに作文の下書きをさせた
2問目は、より具体的な場面です。
Q2. 小学校6年生がAIに作文の下書きをさせました。あなたが担任または保護者なら?
A 使用禁止。もう一度書き直しをさせる
B AIの下書きをどのように使ったかを、本人に説明させる
C 下書きは見ないで、清書は自分で書かせる
D そのまま提出させて評価する
「B どのように使ったかを説明させる」が圧倒的多数。次いでA、C・Dも数名という結果でした。
そもそも、作文で評価したいのは何か
横山教授は、判断の前に立ち返るべき問いを示します。「作文で評価したいのは何なのか」です。
そのうえで、判断のポイントを3つ挙げました。
| 判断のポイント | 見るところ |
|---|---|
| ① 本人のものか | 作文の中で書かれている体験や考えが、その子自身のものか |
| ② 過程が見えるか | AIがつくった下書きを、最終的に吟味・修正した過程が見られるか(=そのままではないか) |
| ③ 説明できるか | どこを使ったのかを、本人が説明できるか |
③が、まさに参加者の多くが選んだB「説明させる」に対応しています。
そして、現時点での考え方をこう示しました。
「生成AIを全部使うのはあまり良くないんじゃないかな。でも、AIを比較・修正して、自分の経験と言葉に戻す活動なら学びになるのではないかというところですね。AI利用の可否は、学習の目的次第ですから」
ここが重要です。もし「プロンプトの書き方」を学ばせたい授業なら、「素晴らしい下書きを作れ」という課題は間違いではないかもしれません。しかし「作文」を学ばせたい授業なら、話は変わってきます。
判断の基準は、この3つ
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 何を学ばせたいのか | 目的が変われば、AIの可否も変わる。まずここを明確に |
| どこで子どもが考えたのか | 思考が発生した場所を見取る |
| 最終的に誰が判断したのか | 書いた人の責任。そこを大事にする |
4.【Q3】AIの間違いを子どもに見つけさせる授業は有効?
Q3. AIの答えが間違っていることを子どもたちに見つけさせる授業は、有効ですか?
A 有効である
B 学年や条件によっては有効
C あまり有効ではない
D こうしたことは行うべきではない
「A 有効である」が圧倒的多数でした。
AIの誤りは、情報を吟味する教材になる
「AIの答えは、本当に正しいんですか?」——この問いは、情報を疑う入り口になります。
ただし、と横山教授は釘を刺します。
「ただ間違いを見つけて『見つけた』という間違い探しの授業では、やはりあまり意味はない。子どもたちは楽しいと思うかもしれませんけれども、そうではなくて……」
では、何をするのか。4つの視点が示されました。
| 視点 | 子どもに考えさせること |
|---|---|
| 出典を見る | どこから、どうしてこうなっているのか |
| 比べる | 他のAI、他の資料と比較してみる |
| 理由を考える | なぜこんな結果が出たのか、なぜ間違ったのか |
| 自分で判断する | 最終的に、自分はどう考えるか |
教師の「足場かけ」がなければ成立しない
そしてもうひとつ、実務的に重要な指摘があります。
「単純に『AIで子どもが調べて間違いを見つけろ』とぱっと放して放任してしまうと、なかなか子どもたちは見つけられないことになります。ですから、必ず教師が準備をしておくことが大事ではないかなと考えます」
ここで、30数年の現場経験からのエピソードが語られます。
「私が教員生活をやっている時に、ちょうどパソコンが学校に入ってくるぞとなって、インターネットが引かれるようになったんですね。子どもたちが自由に検索できるという良さはあったんですけれども、自由に検索すると子どもたちは必ずと言っていいほど、スタートのうちは迷子になりました。
またその頃は、小学生に適したホームページなんかなかったので、子どもたちは漢字も読まない、意味も分からない、ただ持ってきて貼り付けるなんていうことがあった。そういった時には、リンク集を用意したり、適切なページを示したりしましたので、そういったことと似ているのかなと思います」
インターネットが学校に入ってきたときに起きたことが、いま生成AIで再現されようとしている。そして、そのとき有効だったのが「教師の足場かけ」だった。
この足場かけこそが、情報活用能力の育成に結びついていく——というのが、経験に裏打ちされた結論です。
5. 生成AIは、思考を奪う道具にも、深める道具にもなる
ここまでの議論を、横山教授はひとつの対比に整理します。
| 使い方 | やること | 結果 |
|---|---|---|
| A 答えを出してもらう | 「これは何ですか」→「こうです」で終わる | 学習者の思考が入らない。子どもは考えなくなる |
| B 出された答えを 比べて問い直す |
AIの答えを他と比較し、根拠を確かめ、問い直す | 根拠・判断・表現が見えてくる。「考える」活動が入る |
スマートフォンで「これって何だろう」とさっと調べて答えが欲しいとき——それはそれで構いません。しかし、学校で「調べさせる学習」としてAを取ってしまうと、子どもたちは考えなくなる。
そして、AとBを分けるものは何か。
同じ生成AIでも、教師の手立てによって、学びは大きく変わる
6.【Q4】教師がAIで授業案の叩き台をつくる。問題はある?
4問目は、視点が変わります。今度は子どもではなく、先生自身の話です。
Q4. 教師がAIで授業案の叩き台を作りました。問題はありますか?
A 積極的に活用していい
B 条件付きであれば問題ない
C できれば行わない方がいい
D これは行うべきではない
「B 条件付きであれば問題ない」が最多。全体として、先生の活用に対しては比較的肯定的な意見が多く出ました。
AIは「完成品」ではなく「叩き台」
ポイントは、AIが出した案を、教師が直すという順序です。なぜなら——
AIは、目の前の子どもたちの実態を知らない
教師だけが知っていること、判断できることがあります。
| 教師が持ち込むもの | 中身 |
|---|---|
| 子どもの実態 | 家庭環境、子どもたちのバックボーン、学級の状況 |
| 単元の目標 | この単元で、何を学ばせたいのか |
| 評価方法 | どう見取り、どう評価するのか |
| 個人情報・著作権 | この学校では何が扱えて、何が扱えないのか |
これらを加えて「授業として成立する形」に持っていくのが教師の仕事。その手前の叩き台をAIに任せることには、合理性があります。
文部科学省のガイドラインも、教員の活用を後押し
授業では、文部科学省が出している生成AIの利活用に関するガイドラインが示されました。「具体的な利活用」の項目には、こうした例が挙げられています。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 児童生徒の指導に関わる業務への支援 | 授業で取り扱う教材や確認テストなどの叩き台を作成する |
| 学校の運営に関する業務 | 学校だよりや通知文・案内文の叩き台を作成する |
「ガイドラインの前に暫定的なものも出たんですけれども、そこには『子どもたちの方はまだ使えませんよ』と書いてあった。だけれども教員については、なんとかの叩き台、なんとかの叩き台と、もう叩き台のオンパレードで書いてあって。逆に言うと、先生たちには積極的に使っていってください、試してみてくださいということで書かれていました」
そして、教員が使うべき理由をこう説明します。
「子どもたちはもう、自分たちでスマホで色々使ったり調べたりしています。ということを考えると、先生だけがまったく使っていないとすると、その指導方法も分からないということになってしまう」
7.「教える」は、こう変わる
義務教育には、すでに新しい学びが始まっています。
1人1台端末(約5年) → デジタル教科書 → 生成AI
1人1台端末が入っただけでも、学習の形は変わりました。そこに生成AIが加わる。これをどう捉えるか。
横山教授は、生成AIを「思考や表現を支援する知的なパートナー」と位置づけます。聞く・疑う・生かす——つまり対話し、吟味し、活用するという形で使えば、新たな学習につながっていく、と。
そのとき「教える」という行為はどう変わるのか。3つの変化が示されました。
| かつての「教える」 | これからの「教える」 |
|---|---|
| 正解を伝える | 探究的な学び方を設計する |
| 一斉指導・同じ進度で進める | 一人ひとりを見取る |
| 提出物・作品だけを見る | 思考の過程・制作の過程を見る |
ここで、話は最初の論点に戻ります。
AIがあるからこそ、教師は「何を学ばせたいのか」を明確にしておかないといけない
そして、この授業でもっとも印象的だった指摘がこちらです。
「ある意味、AIが入ってきた時には、教師の役割はむしろ見えやすくなってくる。問いを作ってあげて、その過程を見取り、判断を支えていく。教師の専門性をどこで発揮していくのか、そこをしっかりと見据えておく必要が出てくるわけです」
AIに仕事を奪われる、という話ではありません。AIが引き受けられない部分が輪郭を持って浮かび上がる——それが教師の専門性だ、という捉え方です。
8. これからの教師に必要な「実践知」
授業の終盤、これから教員を目指す人に必要な力が4つ挙げられました。
| 実践知 | 内容 |
|---|---|
| 子どもの理解・授業の設計 | ここが大きく変わってくる |
| ICTとAIの位置づけ | 目的に合わせて位置づける。ここが今までと大きく異なる |
| 情報活用能力の育成 | 現行の学習指導要領でも強調されている |
| 倫理と責任 | 情報モラルにも関わる。しっかりと指導していく必要がある |
これは、学校の先生だけの話ではありません
「今回は教育ということでお話をしましたけれども、おそらく皆さんの中には人材育成に関わっている方もいらっしゃると思います。看護、福祉、心理支援、企業、地域への対応の中でも、こういった考えがこれから必要になってくる、またアップデートしていく必要があるのではないかなと思います」
「人に何かを教える」立場にある方すべてに、同じ問いが向けられています。
まとめ:AIを「使う力」より、AIを「教育に変える力」
AIを使う力より、AIを教育に変える力
生成AIの時代に必要なのは、答えを導き出す力だけではなく
答えを吟味し直す力
そして横山教授は、こう締めくくりました。
「これもまだ過渡期ですので、これからどんな風になっていくか分かりません。ですから、皆さんと一緒に、教育の現場についてどうなっていくのかなと考えていかれればと思います」
答えを教える授業ではなく、一緒に考える授業。——4つのアンケートで進んだこの20分あまりは、その姿勢そのものでした。
当日の反応
授業のあと、司会からは「生成AIは身近な存在になっていますが、ただ使うだけではなく、しっかり目的に応じて活用することの大切さ、特に教育現場においてはより効果的に活用していくことの大切さを、改めて実感いたしました」という感想がありました。
9. 教員免許を、星槎大学で
ここまでお読みいただいて、「通信制のオンライン授業」のイメージが少し変わったのではないでしょうか。
今回の体験授業は、星槎大学のWebライブスクーリングと同じ形式です。Zoomでリアルタイムに接続し、アンケートで参加者の考えを集め、その結果を見ながら進んでいく。一方通行ではありません。
| 形式 | 受講方法 |
|---|---|
| Webライブ スクーリング |
Zoomを使い、指定された日にご自宅などからリアルタイムで受講。今回の体験授業と同じ形式です |
| オンデマンド スクーリング |
録画された講義動画を、視聴期間内のお好きなときに視聴して受講 |
| 会場 スクーリング |
決められた日時に会場へ集まり、対面で受講 |
スクーリングは土日・祝日を中心に開講し、1科目を原則10時〜17時の1日かけて学びます。働きながらでも通える設計です。
横山教授が担当する「初等教育専攻」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 専攻 | 初等教育専攻 |
| 学べること | 幼稚園・小学校といった初等教育のカリキュラムを中心に学ぶ |
| 目指せる免許状 | 幼稚園教諭/小学校教諭 |
| 学び方 | 通信制課程。働きながら、ご自宅を拠点に学べます |
星槎大学では、初等教育専攻のほかにも、共生科学・福祉・スポーツ・グローカルコミュニケーションの各専攻で、幼稚園から特別支援学校まで、全学校種にわたる教員免許状の取得を目指せます。
教員免許・星槎大学について、さらに詳しく
学びの内容を知る
初等教育専攻 幼稚園教諭・小学校教諭の免許状を目指せます
取得できる教員免許状 全学校種にわたる免許状に対応
学修システム テキスト学修・スクーリング・科目修得試験の3ステップ
出願を検討する
資料請求はこちら 募集要項・学費・専攻の詳細をお届けします
オープンキャンパス・個別相談会 こうした体験授業に実際にご参加いただけます
出願はこちら 10月生の出願を受付中です
※本記事は2026年開催のオープンキャンパス 第2部 体験授業の内容をもとに構成した授業レポートです。講師の発言は、読みやすさのため一部を整理しています。アンケート結果は当日の参加者の傾向であり、統計的な調査ではありません。生成AIをめぐる制度・ガイドラインは変更される場合があります。科目・制度・日程等の最新情報は募集要項をご確認ください。














