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学びの多様化学校とは?20年の現場が語る「やる気」の前にあるもの
シンポジウムレポート
2026年7月22日に開催した星槎大学公開シンポジウム「学びの多様化学校から考える、これからの学びのかたち」のレポート、後編です。
前編:学びの多様化とは何か——「みんな同じ教室で学ぶこと」は、インクルーシブなのか(本学副学長 西永堅教授の講演)
前編では、「学びの多様化」という考え方を整理しました。本記事でお伝えするのは、その現場です。
登壇されたのは、蓮田亮大氏。星槎グループ本部長であり、文部科学省から学びの多様化マイスターを委嘱され、全国の自治体・教育委員会と学びの多様化学校の新設について対話を重ねている方です。24年前に星槎に入職し、学びの多様化学校の立ち上げに教員として関わってきました。
講演のなかで語られたのは、制度の解説ではありませんでした。「やる気」の前には「やれる気」がある。「行きたい学校」の前に「まんざらでもない学校」がある。偏差値ではなく「変化値」を見る。——20年間、子どもたちの前に立ってきた人の言葉です。
不登校のお子さんを支えている保護者の方、現場の先生方、そして学びの多様化学校の設置を検討されている自治体のご担当者に、届けたい内容です。
目次
お話しした人
星槎グループ本部長/文部科学省 学びの多様化マイスター
蓮田 亮大(はすだ あきひろ)
2002年、学校法人星槎に入職。学びの多様化学校(当時の不登校特例校)の立ち上げに教員として参画。現在は法人本部で各学校の運営に携わるとともに、文部科学省より学びの多様化マイスターの委嘱を受け、全国の自治体・教育委員会と学びの多様化学校の新設について対話を重ねている。
1. 学びの多様化学校とは——制度の基本
最初に、制度の輪郭だけ押さえておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どんな学校か | 不登校児童生徒等の実態に配慮した、特別の教育課程を編成する学校。通常の教育課程の基準によらない編成が認められます |
| 根拠 | 平成17年7月〜。文部科学大臣の指定により実施できます(教育課程特例校制度) |
| 名称の変更 | 2023年に「不登校特例校」から「学びの多様化学校」へ改称。制度の内容に変更はありません |
| 設置数 | 全国84校(2026年4月時点)。うち25校が同年4月に新規開校しました |
| 設置者の内訳 | 公立59校(都道府県立4/市区町村立55)/私立25校 |
| 今後 | 文部科学省は将来的に全国300校を視野に入れ、設置促進の啓発事業とマイスター派遣事業で後押ししています |
この84校のうち、5校を運営しているのが星槎グループです。〈校名一覧の確認をお願いします〉
制度の説明はここまでです。ここから先は、その5校を運営してきた人の話になります。
2. 星槎の20年——1学年12名のフリースクールから

▲ 講演では、5校の一覧がスライドで示されました
星槎グループがこの分野に取り組み始めたのは、20年以上前にさかのぼります。
「学びの多様化学校をグループでは今5校運営しております。そのうちの1つ、いちばん古いものですと、もう20数年になりまして。いわゆる、この分野の初期面というところです。当時は小泉総理の時代の構造改革特区で学校設置をしたと。星槎グループ自体は、実は来年55周年を迎える長い教育グループになっておりまして、それらすべては今で言う『誰一人取り残さない』——このテーマに向かって活動を進めてきた教育グループになっております」
在籍数だけを見ると規模が大きく見えるかもしれません。しかし、始まりは小さなものでした。
「元々、最初は1学年12名程度のフリースクールからの前進ですので。今、各地域にできている学びの多様化に関する教室ですとか、それぐらいの規模感かなと思いますが、20年経つ中で少しずつトライアンドエラーを繰り返しながら——一方で、地域にはまだ行き場がない子たちがたくさんいますので、それを少しずつ、慎重に慎重に拡大して場所を広げてきたと」
「マンモス校のように受け止められるかもしれませんが、本当に慎重にやってまいりました」。蓮田氏はそう振り返ります。当時は現場の教員として、「そんなに大きくするな」と法人本部に言っていた側だったそうです。
3. 子どもは「できない」のではない。適応できなかっただけ
蓮田氏は1974年生まれ。団塊ジュニア世代の最後にあたります。講演では、まずこの世代の話から入りました。
「私の年代は203万人生まれていました。で、今年生まれたのが67万人ですから約3倍で。今の個別最適の議論にある『一斉の、画一の』というものの産物というか。ただ、当時べつに自分が均一だと思って生きてはこなかったんですが、これだけ子どもが減ってしまいますと、やはり1人ひとりしっかりと大切に育んでいくというのが、今の人口動態からも言えるんじゃないかなと思っております」
そのうえで、現場で出会ってきた子どもたちについて、こう語ります。
「皆さんの前にも当然、不登校あるいは学びにくさを抱える子どもたちがいると思います。その子たちの特徴を、各教育委員会の方、あるいは現場でも実感としてあるんですが、決して子どもたちは何かができない、あるいはかわいそうな存在ではないと思います。ただ、その学びのペースであったり環境に、うまく適応できなかった。そういった状態なんじゃないかなと」
ここから、話は思いがけない方向に向かいます。負担をかけているのは、子どもの側ではないのではないか——。
「ともすると、団塊ジュニアが抱えているこの固定観念。『普通こうだよね』とか『この学年だったらこうだよね』っていう、この固定観念、普通・当たり前・一般的っていうものが、子どもたちに負担をかけているんじゃないか。むしろ社会的なそういったバイアスのほうが強いんじゃないかなという風に実感してまいりました」
「できない子ども」がいるのではなく、「合わない環境」がある。前編で西永副学長が示した「普通教育を拡大する」という考え方と、現場の実感が重なります。
4.「やる気」の前に、「やれる気」がある
ここからが、この講演でもっとも多くの参加者がメモを取っていた部分です。
文部科学省の調査で、不登校の要因の第1位は「無気力」。前回調査では31%を占め、大きな課題になっています。では、どうすればやる気が出るのか。
「やる気が出る・出ないの話にスポットを当てますと、突如スイッチが入ってやる気になるということは、なかなかないんじゃないかなという風に思っております。『どうせ俺は』とか『別に』とか、なんかそういった言葉で鎧をかぶってこう、本心を隠してくるわけですけど。少しずつ少しずつ、子どもたちのその鎧を解かなければいけない」
そして蓮田氏は、「やる気」の手前に、もうひとつの段階を置きます。
「やる気になるまでのプロセスにおいては、途中、『やれる気』になる状態というのが必要なんだろうと思います」
「やれる気」が生まれるまでの5段階
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「どの先生方とお話ししても、やはり出てくるのはスモールステップという言葉ですね。子どもたちのほんのちょっと背伸びをするかしないかで。やはり大切なのは、1つひとつ『できた』という体感経験。その先に『やれるんじゃないかな』『あれ、ワンチャンこれ俺いけるかも』とか、そんな感じになってくると思うんですね。で、その時にリアルの共同学習で、仲間が『いいじゃん』あるいは『ありがとう』なんて言うと、突如背中を押されたかのように『僕はそれは人の役に立つからできるんだ』と、やっとやる気のスイッチが入るんじゃないかなと思っています」
ここから導かれる支援のあり方は、明確です。
「ですから、不登校支援で、すぐに支援して学校に行くとか、やる気になるとかの前の、その中庸の『やれる気』になる段階というものの支援を、丁寧にやっていく必要があるのかな。子どもたちは1回できたからと言って、すぐさま『やれる気』にもなりません。1つひとつを評価しながら、励ましながら、あるいはその励ましの量を、しっかりと見える化していくなんてことも必要なんじゃないかなと思っております」
「やる気を出させる」という発想そのものが、順番を飛ばしているのかもしれません。
5.「まんざらでもない学校」というプロセス
同じ考え方は、「学校に行く/行かない」にも当てはまります。
「学校に行きたくない、あるいは教室に行きたくない子が、本当にすぐ行けるようになるかって言うと、これもまた間にプロセスがあって。『まんざらでもない学校』っていうのがあるんじゃないかなと思っております」
| 段階 | 子どもの状態 |
|---|---|
| 行きたくない学校 | 教室に入る、返事をする、出欠確認を取る——そのすべてが負担になっている |
| まんざらでもない学校 | 「この先生だったら安心できるかも」「この仲間たちだったら安心できるかも」 →「ちょっと行きたくない学校だけど、行ってもいいかな」 |
| 行きたい学校 | 自分の居場所として、主体的に通える |
星槎(横浜)には、不登校傾向・不登校経験のある生徒が約6〜7割在籍しているといいます。なかには、支援教室や保健室で出席日数を取っていて、統計上は不登校として表れない子どももいます。
「その子たちも、通う手前で『先生、この先生だったら安心できるかも』『この仲間たちだったら安心できるかも』と。で、『ちょっと行きたくない学校だけど、行ってもいいかな』っていう、まんざらでもない状態のプロセス、ここが大事なんじゃないかなと思います。ここにはさまざまな手立てが必要です。本来であればすぐさま教室に入って返事をするだとか、出欠確認を取るだとか。そこに至る手前のプロセスですね。スモールステップで、あるいは代替案で『こういうことでもいいよ、それでもいいよ』なんていうことが必要になってくるかなと思っています」
「学校に行けるようになりましたか」という問いの手前に、「学校が、まんざらでもない場所になりましたか」という問いがある。支援の目盛りが、一段細かくなります。
6. 偏差値ではなく、「変化値」
星槎が大切にしている言葉として、蓮田氏が紹介したのが「変化値」です。偏差値との対比で生まれた考え方です。

▲ 星槎が大切にしている「変化値」という考え方
| 偏差値 | 変化値 | |
|---|---|---|
| 何と比べるか | 他者(周囲の集団) | 昨日の自分 |
| 測るもの | 集団のなかで自分がどの位置にいるか | 昨日より、どれだけ前に進んだか |
| 評価の種類 | 集団内評価・相対評価 | 個人内評価・形成的評価 |
| 具体例 | テストの点数、模試の判定 | 10分の休憩が必要だった子が、半年後には5分で教室に戻れるようになった |
| いつ必要か | 自己肯定感が回復し、自分の得意・不得意を理解したあと | 不登校支援においては、まずこちら |
「偏差値というのは、まさに他者との比較で、周りの状態に対して自分がどの位置にいるかを測る尺度だと。それに対して、周りとの比較の中で辛い思いをしていたり、あるいは子どもたちには得意・不得意があります。平均点を取れないからどう、ではなくて、得意なところは評価される。苦手なところはそのように対応していくっていうところで。ちょっと偏差値から離れて、変化値を見ていこう」
「変化値というのは、昨日の自分より今日の自分がどれだけ前に進んだか。たとえば、教室にずっと入り続けることが難しくて、10分休憩の権利を得て出ていくところが、半年変わったぐらいで『5分休憩のクーポンで僕は行けるようになる』。これが変化値。ほんの少しでも自分が前に進んでいる。今まで取り組めなかったものに、ほんの少し取り組んでいる。その変化値というのが大切かな。私たちは、キャンペーンじゃないですけれど、変化値ナンバーワンの学校づくりを進めていきたいという風に思っています」
ただし、偏差値を否定しているわけではありません
ここは、誤解されやすい部分です。蓮田氏自身、はっきりと但し書きを添えていました。
「もちろん偏差値も大切です。徐々に徐々に、さまざまな取り組みの中で自己肯定感が上がって自信を回復していく中で、その先はやはり、自らの課題感であるとか、あるいは得意・不得意を理解した上で、他者と比べてどの位置にいるのかというのは追い追い必要になるかなと。ただ、不登校支援においては、変化値・個人内評価・形成的評価というものがすごく大切になるかなと思っております」
変化値を、どう高めるか——5つの手立て
| 手立て | 内容 |
|---|---|
| ① 客観的なアセスメント | これまでの経験だけでなく、さまざまな角度から子どもをよく知る。客観的なアセスメントに拠って子どもを見てみる |
| ② 子ども自身の目標にする | 個別の指導計画は、現在はカウンセラー・教員・保護者の間でやり取りされるもの。これを子ども自身の行動目標として持ってもらう(子どもの了承を得る) |
| ③ リフレクション | 1日の「反省」ではなく、とくにうまくできたこともしっかりと携えていく |
| ④ 励ましを見える化する | 変化したほんの少しの積み重ねを、しっかり見える形にしてあげる |
| ⑤ 保護者と共有する | 保護者の方は子ども以上に傷ついている、自信を失っているケースがある。スモールステップの育ちを、保護者と共有していく |
とくに⑤について、蓮田氏は一保護者としての実感も交えて語っていました。支援の対象は、子どもだけではありません。
7.「学校復帰」は、ゴールではない
クロスセッションで、ファシリテーターの石元教授から核心的な問いが投げかけられました。「不登校支援のゴールは、極端に言えば学校復帰なのかどうか」——。
「現状、文部科学省のプラン(COCOLOプラン)では、学校復帰というものがすべてのゴールではないという風に考えられていると思います。その中で、学びの多様化学校があったり、教育支援センターの学びの場、あるいは校内フリースクール、あるいは外側のフリースクール、東京都で言えばチャレンジスクール。いろいろな選択肢がある中で、自分が生き生きと学び続けられる場所の選択肢が増えていくということになっていくと思います」
そのうえで蓮田氏は、「復帰か、それ以外か」という二分法そのものが、これから消えていくと見通します。
「そもそも、通常の学校にいる子どもたちもすでに多様であると。その1人ひとりの特徴を認めて育んでいくというのが大前提になっていくので、必然的に、今まで行けなかった通常の学校にも戻る選択肢も出てくるんだろうという風に思っています。ですから、これまで分けて考えられていたものが当然混ざっていきますし、子どもたちの前にはたくさんの選択肢の中から主体的に選べるんだと。もうこの時点で選んでいくというところで、ポジティブな選択になっていくと思いますので。今までの『行き場がない』とか『やっとたどり着いた』とか、そういうところは変わっていくんじゃないかなと」
では、何をもって成果とするのか
この問いは、行政にとっても難題です。シンポジウムに登壇された東京都教育委員会の坂本雅彦教育長は、「学校復帰率だけでは測れない変化を、どう評価するのか」という問いに、こう答えました。
「いわゆる問題行動調査で、学校にどのぐらい復帰しているかは、係数的には出てくるんですね。ただ、その復帰の定義って何か、をやらないといけないわけです。1ヶ月不登校だったその子がやっと戻れるようになった。これをもって復帰率と考えるか、もうちょっと別の考え方で復帰を捉えるか。これはなかなか難しいところだと思います。数字をそういう形で定量的に作り上げて表現すること自体が難しいところへ持ってきて、今こう定性的に、どうやってこの復帰というものを考えていくのか。これは非常に難しいし、評価も大変だと思います」
(東京都教育委員会 坂本雅彦 教育長)
数字で測れないものを、どう評価するか。現場が「変化値」という言葉で向き合っている課題に、行政もまた、別の入り口から直面しています。
8. 次期学習指導要領の「余白」——先生は伴走者であり、空間のクリエイター
講演の終盤、話は制度の先行きに移りました。次期学習指導要領の改訂に向けて、学校が準備をしていく段階に入っています。

▲ 次期学習指導要領に向けた4つの柱
蓮田氏が挙げた柱は、次の4つです。
| 柱 | 意味するところ |
|---|---|
| 主体的・対話的で深い学び | の実装 |
| 多様性の包摂 | 1人ひとりの違いを前提とした教育課程へ |
| 実現可能性の確保 | 現場が実際に回せる設計にする |
| 余白 | これまで学習指導要領になかったもの。ここが最大の転換点 |
「これまでは学習指導要領に余白がなかったことにより、先生方はただただ、網羅的にするものを消費してきたと思うんですが、今後はこの創造的な余白を使って、学校づくりに主体として先生方が参加できるんじゃないかなという風に思っております。子どもたちに主体性を求めるとともに、私たち教員の主体性に大きく期待して。なおかつ先生方は伴走者であり、空間のクリエイターであるという認識で、大きなチャレンジをしていただけるんじゃないかなと思っています」
もっとも、それが簡単だとは言っていません。
「この余白・自由度の取り扱いについて、すでに頭を悩まされている先生方も多くいると思いますが、ここは多分、産みの苦しみかなと。今、不登校・発達のお話をしましたが、ここに日本語が習得できていない子どもたちであったり、あるいは特異な才能の子どもたちも入ってきます。こういった子どもたちが教室の中にいて、特別が当たり前、普通が多分変わっていくんだろうという風に思ってます」
「特別が当たり前になり、普通が変わっていく」。前編で西永副学長が述べた「普通教育を拡大する」という言葉と、まったく同じ方向を指しています。理論と現場が、別々の道筋で同じ結論にたどり着いていました。
9. 支える人を、どう育てるか
情熱だけでは、なんともなりませんでした
それを支える教員には、何が必要か。蓮田氏は、自身の経験を率直に語りました。
「私も実感として、入った当初は情熱でなんとかなると思ったんですね。でも、何ともならないです。諦めないという気持ちは必要ですが、情熱だけでは子どもたちに対応できず、やはり教員にも学びが必要だということを、長年かけて体感してまいりました」
個別の指導計画を立案する。代替案を提示する。客観的なアセスメントを読み解く。これらはいずれも、意欲ではなく技術の領域です。星槎グループでは大学を持つ強みを生かし、教員向けの研修を用意しています。
情報が、省庁ごとに分断されています
もうひとつ、蓮田氏が現場の課題として挙げたのが、支援情報の分断でした。
「私も一保護者ですので、情報が分断されるということは実感としてあると思うんです。たとえば学校の話であれば文部科学省であったり、そこの界隈の情報なんですが、一度フリースクールに行くと、これがこども家庭庁の範囲になったり、あるいは厚生労働省の範囲になったりっていうことで。これを取りまとめて、誰かが『あなたの最適はここですよね』という——」
「私たちの学校でも、急遽、家庭の経済状況が急変するなんていう事情があったりした時に、学校の周りにあるお金の事情だけじゃ全然家庭を救えなくて。私たちは区役所ですとか民生委員だとか、いろんなところにつながって、この子の学びが途絶えないようにしていくわけですけど。この情報が、所管しているがゆえに分かれてしまっているというところがあるのかなと思います」
解決の方向として挙げられたのが、ブリッジ人材という考え方です。
「もちろん学校の先生が自分の領域を超えるというのは、なかなか難しいと思います。であれば、何がしかのブリッジ人材であるとか、ブリッジする役割の部署であるとか、そういったものがあると、より歩留まりにならないで済むのかなという風に思います」
私学と公立が、一緒に研修をしている自治体もあります
「すでにある県では、学びの多様化学校の私学の学校と公立学校が、研修などを行っているということで。そのノウハウを共有していくというところで、まず先生方がつながっていくことで、子どもたちの環境っていうのは分断されにくくなるのかなと思っています」
なお、学びの多様化学校の設置を検討している自治体・教育委員会に向けては、文部科学省がマイスター派遣事業を実施しています。蓮田氏もそのマイスターの一人として、全国で対話を重ねています。
当日の反応
クロスセッションの終盤、蓮田氏は20年間の変化について、こう語りました。
「先ほどファンダメンタルという風に教育長がおっしゃったんですけど、私、本当に嬉しく思っていて。この課題感、20年前は本当に端っこの課題感でした。今、真ん中でこの問題を、これを端に発して、ここから全体の教育の話に向かっていくっていうところが、本当にありがたいなと思っています」
「この子たちを通して『普通って何だろう』とか、『日本の教育をどうしていくんだ』というところに、こういった子どもたちをちゃんとフィルターの真ん中に置いていただけることっていうのはすごくありがたいですし、その目線で全体を捉えるほうが、日本の教育っていうのは発展するんだろうという風に思っています」
まとめ:環境に押し込めて子どもを変える教育は、もう終わり
シンポジウムの最後、登壇者それぞれに「これからの学びのかたちを実現するために、最も変えなければいけないこと、大切にしなければいけないこと」が問われました。蓮田氏の答えです。
「さまざまな選択肢をポジティブに捉える中で、子どもたちは健やかに成長して変化していってもらいたいんですが、無理やり環境に馴染ませて、押し込めて子どもたちを変えるっていう教育は、もう終わりだなという風に思っております。彼らを受け止めて、なおかつこれから、さまざまな外国あるいは宗教・文化の違う方たちと一緒に国づくりを、私たちであったり、あるいはその他の子たちがしっかりと寛容力を身につける教育が、日本にとって必要なんじゃないかなと思っています」
この日の内容を整理します。
- 学びの多様化学校は全国84校(2026年4月時点)。将来的に300校が視野に入っています。星槎グループはそのうち5校を運営し、最も古い学校は20年以上の歴史があります
- 子どもは「できない」のではなく、環境に適応できなかっただけ。むしろ「普通・当たり前・一般的」という社会的バイアスのほうが、子どもに負担をかけています
- 「やる気」の前に「やれる気」がある。スモールステップ →「できた」体感 →「いけるかも」→ 仲間の承認 →「人の役に立つからできる」。支援すべきは、この中間段階です
- 「行きたい学校」の前に「まんざらでもない学校」がある。「この先生なら安心できるかも」という段階を、飛ばしてはいけません
- 偏差値ではなく「変化値」。昨日の自分より、どれだけ前に進んだか。ただし偏差値も、自己肯定感が回復した先では追い追い必要になります
- 「学校復帰」はゴールではありません。選択肢が増え、主体的に選べることが、ポジティブな選択になります
- 次期学習指導要領の「余白」が、先生を学校づくりの主体に変えます。先生は伴走者であり、空間のクリエイターです
- 情熱だけでは、なんともなりません。教員にも学びが必要です
前編で西永副学長が示した「普通教育を拡大する」という考え方と、蓮田氏の「特別が当たり前になり、普通が変わっていく」という現場の実感。理論と実践が、別々の道筋で同じ場所に着地したシンポジウムでした。
前編もあわせてどうぞ
「そもそも学びの多様化とは何か」——本学副学長・西永堅教授が、インクルーシブ教育をめぐる4つの誤解を解きほぐします。
星槎大学で、「学びの多様化」を支える力を身につける
星槎大学は2004年に開学した、通信制課程のみの大学です。建学の理念は「誰一人取り残さない」。本記事でご紹介した現場の考え方は、本学の教育課程にそのまま流れ込んでいます。
1.「学びの多様化支援士」履修証明プログラム(大学院)
不登校に直接アプローチする専門性を、6ヶ月・完全オンラインで体系的に学ぶプログラムです。「情熱だけではなんともならない」その先に必要な、技術と知識を扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | 完全オンライン(オンデマンド+Webライブ) |
| 期間 | 6ヶ月(1月/4月/7月/10月の年4回開講) |
| 内容 | 全10講座63時間。不登校の現状と背景/個別支援計画・指導計画の立案と実施/特別な教育的ニーズへの対応/心理的支援/家族支援/代替的な教育方法/キャリア教育/多様な学びを支える連携/アセスメント技法/外国につながる子どもへの支援 |
| 出願資格 | 高等学校を卒業していること |
| 修了時 | 学校教育法第105条に基づく履修証明書を発行。職業能力証明書(ジョブ・カード・コア)として活用できます |
本記事で語られた個別の指導計画・アセスメント・家族支援は、いずれもこのプログラムの科目として扱われています。
2. 特別支援学校教諭免許状を、通信制で取得する
本学では、幼稚園/小学校/中学校(社会・保健体育・英語)/高等学校(地理歴史・公民・保健体育・英語)/特別支援学校の教員免許状の取得を目指せます。
すでに教員免許をお持ちの現職の先生が、働きながら特別支援学校教諭免許を追加取得するケースも数多くあります。スクーリングはWebライブ・オンデマンド・会場の3形式から選べ、科目等履修生としての受講も可能です。
星槎大学について、さらに詳しく
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取得できる教員免許状 特別支援学校教諭免許状ほか、目指せる免許状の一覧
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※本記事は、2026年7月22日に駒澤大学 深沢キャンパスおよびオンラインで開催された星槎大学公開シンポジウム「学びの多様化学校から考える、これからの学びのかたち」の内容をもとに構成したシンポジウムレポートです。登壇者の発言は、読みやすさのため一部を整理しています。統計・制度の情報は2026年8月時点のものです。














